映画「六人の嘘つきな大学生」は、原作小説の魅力と映画化による改変が話題となった作品です。
原作は緻密な伏線とストーリーテリングが高く評価され、2021年の発売当初から注目されていました。
しかし、映画版ではその改変が物議を醸し、ミステリーとしての完成度に疑問を持つ声も少なくありません。
ここでは、本作のポイントを3つの考察に分けて解説します。
考察① 原作の伏線の魅力と映画版での改変
原作小説の魅力は、何といっても緻密に張り巡らされた伏線です。
登場人物の行動や何気ない発言が、後に大きな意味を持つよう設計されています。
そのため、読み進めるほど「なるほど、そういうことだったのか」と膝を打つ瞬間が多くあり、読者に知的な快感を与えました。
一方で、映画版はその伏線の多くを省略しています。
特に6人の大学生それぞれの過去や秘密に関するエピソードの削除は、物語の整合性に影響を及ぼしました。
これにより、観客が登場人物たちに共感しづらくなり、ミステリーとしての奥深さが失われたといえるでしょう。
原作の緻密さを忠実に再現することで、映画版もまた異なる評価を得られた可能性があります。
考察② ミステリー映画としての成功と失敗
ミステリー作品では、トリックや真相の整合性と必然性が極めて重要です。 原作は、この部分を徹底的に練り上げることで、読者に納得感を与えることに成功していました。
しかし映画版では、いくつかの重要な設定やトリックが変更または削除されています。
たとえば、登場人物たちが秘密を暴かれる過程や、それに伴う心理描写が浅くなり、犯人特定の推理過程も短絡的に描かれている部分が目立ちます。
これにより、観客は「どうしてこうなったのか」という疑問を抱きやすくなり、ミステリーとしての説得力が薄れてしまいました。
考察③ 映画独自の要素とその評価
映画版では、原作にない演出やキャラクターの描写が追加されています。
これらは制作者側のオリジナリティを意識したものでしょう。 たとえば、感動的なエピソードや余韻を持たせるための演出が加えられています。
ただし、これらの要素が原作の緻密なストーリーテリングと相容れない部分もありました。
特に原作で明かされていた最大の謎が映画版では曖昧にされ、観客の解釈に委ねられています。
これは、物語の核心を曖昧にすることで余韻を残そうとする試みであった可能性がありますが、多くの観客にはストレスを与える結果となったようです。
まとめ
「六人の嘘つきな大学生」は、原作と映画版で大きく異なる作品体験を提供します。
原作は緻密な伏線回収とストーリーテリングで高い評価を得ましたが、映画版はその魅力を十分に活かせていない部分がありました。
それでも、映画版ならではの演出やビジュアルの魅力があることも事実です。
原作と映画、それぞれの良さを理解することで、本作をより深く楽しめるでしょう。
