映画「ブラックパンサー:ワカンダフォーエバー」は、MCU（マーベル・シネマティック・ユニバース）のフェーズ4を締めくくる作品として、前作からの大きなテーマを引き継ぎながらも、新たな物語の方向性を示しました。
前作「ブラックパンサー」の中心人物であったティチャラ（チャドウィック・ボーズマン）の喪失を扱いながら、ワカンダとその住民たちがどのようにその影響を受け、成長していくかを描いています。
本記事では、劇中に込められたメッセージやキャラクターの成長、物語の裏に隠されたテーマについて考察します。
考察① ティチャラの喪失とワカンダの再生
本作の冒頭で描かれるティチャラの葬儀は、物語全体の基調を設定する重要なシーンです。
ティチャラを失ったワカンダは、国内外で不安定な状況に陥り、そのリーダーシップが問われます。
この流れを通じて、本作は喪失と再生というテーマを象徴的に描きました。
特に印象的なのは、ティチャラの棺のデザインとそれを見送るワカンダの人々の姿です。
棺には彼が多い継承戦で使用した縦と槍が添えられ、彼の生涯が象徴されています。
また、マーベルスタジオロゴが通常のMCUヒーローたちの映像ではなく、ティチャラの思い出に焦点を当てた特別バージョンになっている点も注目すべきポイントです。
これにより、観客もまたティチャラへの敬意を新たにすることができました。
葬儀以降、ワカンダは母ラモンダが率いることになりますが、彼女は国家の安全保障を強化する一方で、個人的な悲しみと向き合う姿が描かれます。
彼女の発言や行動を通じて、喪失の後にどのように希望を見出すかという普遍的なテーマが示されています。
考察② シュリの成長とブラックパンサーの継承
シュリは本作の中心人物として、兄ティチャラの死をきっかけに大きな変化を遂げます。
科学技術に没頭する彼女は、感情を抑えて現実から逃避しようとしますが、母ラモンダや新たな出会いを通じて成長を遂げます。
劇中、シュリが人工的に作り出したハーブを飲むシーンでは、着るもんが幻影として現れます。
この選択は、彼女が復讐に囚われる危険性を象徴しています。
着るもんが現れたのは、シュリの内面的な葛藤を映し出すものであり、彼女が自分の中の闇と向き合う必要があることを示しています。
最終的にシュリは復讐の誘惑に打ち勝ち、ティチャラの意思を継ぎながらも独自の道を切り開いていきます。
シュリが新たなブラックパンサーとして選ばれるシーンは、彼女の成長とともに、ワカンダが新たな時代に向かう決意を象徴しています。
また、彼女が着るブラックパンサーのスーツには、ティチャラや着るもんが着ていたデザインの要素が取り入れられており、過去と現在の繋がりを表現しています。
考察③ ワカンダとタロカンの対立
本作では、新たな敵であるタロカンのリーダー、ネイモアが登場します。
彼の登場により、ワカンダは外部からの脅威にさらされるだけでなく、自国のアイデンティティを再確認する必要性にも直面します。
ネイモアの背景には、植民地支配や歴史的な迫害といった深い社会的テーマが反映されています。
彼の動機は単なる破壊衝動ではなく、自分の国と人々を守るためという点で、ワカンダと似たような側面を持っています。
このように、ワカンダとタロカンの対立は単なる善悪の戦いではなく、複雑な社会的背景を絡めた物語として描かれています。
また、シュリがネイモアとの戦いの中で復讐を選ばず和解を選ぶ場面は、ティチャラの理念を思い起こさせます。
この選択によって、両国が協力して未来を築く可能性が提示されました。
まとめ
映画「ブラックパンサー:ワカンダフォーエバー」は、喪失と再生、成長、そして和解といったテーマを通じて、深い感動を観客に与えました。
シュリを中心に描かれたストーリーは、彼女の成長とともにワカンダの未来への希望を示しています。
また、新たなキャラクターや世界観の拡張により、MCUの物語をさらに豊かにしました。
本作は、個人や国家が困難に直面したとき、いかに立ち上がり、他者との繋がりを大切にしながら未来を切り開くかを描いた作品です。
ティチャラへの敬意を表しながら、新しい時代の幕開けを予感させる物語として、多くの観客の心に響いたことでしょう。
